マンション改修の歴史(ジャンプ編)

私たちのマンション大規模修繕のじっさい/築12年目

工事監理日誌に見る、工事の流れ



マンション大規模修繕の必要性を示す、代表的な例を示す。これが私たちのマンションのベランダ床の改修である。
ベランダ床の改修は、「監理者からのお知らせbQ」から順次詳しく解説している。

ベランダ床改修前 ベランダ床改修中 ベランダ床ウレタン防水 生まれ変わったベランダ床
改修前のベランダ床
防水モルタルが、凍害を受けてぼろぼろ
改修中
劣化した部分は撤去して新規にモルタルを打設
仕上げ中
しっかり厚みをつけてウレタン防水を施工
仕上がって、生まれ変わったベランダの床
分譲時よりグレードアップ


 【はじめに】
 マンション修繕工事における、監理者の必要性とは何だろう?
 ステップ編の最終段階で、入居者の皆さんに監理の必要性を訴え、自ら監理の仕事を買って出たのは、「施工者に対する不安感・不信感」があったからではない。
 むしろ、入居者全員を代表して、専門家の立場で、施工者と共に「よい仕事」をしたかったからである。

 ひとくちに「監理」といっても、幅が広い。
 じっさいに、総会や、理事会・専門委員会のなかでも、
「サラリーマンとしての生活をしながら、監理のしごとを両立できるのか?」
「まんいち、遠隔地の現場に赴任することになったら、事実上、監理のしごとは可能か?」
という、議論があった。
 そういうとき、皆さんの頭のなかにある「監理者」のイメージは、いわゆる「常駐監理」であり、施工のいっさいをチェックするひと、という意味合いである。
 私は、笑いながら、「この工事は、じっさいには監理者などいなくてもきちんとできると思っています。もちろん、手抜きをするような業者ではありません。ただし、改修工事ですから、予期しないいろいろなことが起こったときに、どうしても専門的な判断が必要になることが予想されます。また、管理組合の側に立って、工事の流れをお知らせすることも必要だと思っています。そのための監理者ですから、肩の力を抜いて、施工者と、入居者の橋渡しをするつもりで、引き受けるのです。」と言った。
 なぜなら、私は新築工事のプロではあるが、改修工事の経験が浅い。
 今回の工事では、はじめから、「札幌塗装工芸」のS部長さんから、一貫して彼のノウハウを聞かされ、同じ施工屋として共感し、また提案もした。
 彼も胸襟を開いて、私の考えを真剣に聞いてくれた。
 私は施工屋であるから、工事の流れに沿って、何をしなければならないかは熟知している。
 したがって、マンションに住む組合員に対して、つねに先手必勝で「お知らせ」を配布することで、施工者とのパイプ役に徹することにした。

 契約にこぎ着けるまでに、たいへんな仕事の8割以上が終わったと感じていた。
 実際の工事が始まってからは、監理者のしごとは、それほどたいへんではない。
 これまでの「建物診断」→「改修設計」→「業者決定」のプロセスが、しっかりできているならば、そこまでに培った信頼関係があるのだから、あとは施工者の良心を信じるのみである。
 ここでは、1998年7月現在 進行中の、大規模修繕工事の、じっさいの仕事の流れに沿って、私がマンション入居者のみなさんに配布した「お知らせ」を中心に振り返りたい。


着工前の準備作業……細かい細部の詰め

日程 打合せ事項 施工者から 監理者から
3/7 理事長名で、工事契約を締結 契約書一式を提出
3/21 工事説明会前の準備理事会 「工事のお知らせ」パンフレットを全戸に配布準備
 B5判で26ページ建て
工事説明会準備資料
駐車場使用状況に関するアンケート
3/23 着工前準備作業 緊急時連絡体制表を提出
クレーン稼働日程を提出
協力業者リスト提出
労働基準監督署届出書類(足場設置)のコピー提出
全体工程表の提出
「工事中のお願い」全戸配布
工事保険の内容確認
賠償責任保険の内容確認
駐車場調査まとめ
3/27 工事説明会 32世帯出席 施工者としての説明 監理の方針説明
施工者への協力要請
駐車場・専用庭などでの協力依頼

 工事説明会で、質問が集中するのは、「工事中、どんな不便を強いられるのか?」という一点である。
 工事の内容については、すでに総会で議決済みだから、あとは、ひたすら「お願い」のオン・パレードになる。
 お願いすべきことはお願いし、反対に入居者からの要望事項には、謙虚に耳を傾けることしかない。
 具体的には、つぎのような要望が出て、きちんと対応する約束をした。

  1. 網戸の取り外しが難しいので、手伝って欲しい
  2. ベランダに置いてあるものを、室内に取り込むスペースがない。貸倉庫などの手当がほしい

着工後の流れ

 以下に、工事の流れをまとめたが、正直言って、無味乾燥で面白くない。
 わたしが、2週間に1回程度のペースで発行した、「監理者からのお知らせ」を読んでいただくと、入居者の気分が味わえる。

日程 作業の内容 監理関係のことがら 配布文書等
準備 4/6 事務所の床養生
4/6 自転車置き場の除雪
4/7 安全大会実施
4/9 自転車置き場の設置
施工者との電子メールでの往来が本格化
安全大会に管理組合名にて奉献酒
自転車置き場の位置を指示
監理者からのお知らせbP(3/28)
監理者からのお知らせbQ(4/12)

駐車場区画移動のお願い
外壁色決定についてのアンケート
第1週
4/13〜
外部足場材料搬入
外部足場組立
駐車場クレーン作業
駐車場のクルマ入れ替え
クレーン乗り入れの日程調整
外部足場に設置する看板の確認
初の工事協議会(毎週土曜日)
理事会(外壁色の決定方法)
監理者からのお知らせbR(4/13)
監理者からのお知らせbS(4/19)
第2週
4/20〜
外部足場組立
朝顔設置
駐車場クレーン作業
メッシュシート張り
外壁塗装見本板設置
足場に設置する外壁色見本の指示
仮設足場の検査(安全面)
第3週
4/27〜
メッシュシート張り
ベランダ床調査
南面塗膜剥がし
外壁塗膜剥がしの状況チェック
ベランダ床点検結果の検討
第4週
5/4〜
各面塗膜剥がし
シーリング撤去
屋上防水補修
作業後のゴミ処理の指示
ベランダ床の旧塗膜の調査
監理者からのお知らせbT(5/6)
第5週
5/11〜
北面塗膜剥がし
ベランダ床はつり
各面高圧洗浄
ひび割れ爆裂補修
各面シーリング
塗膜剥がしの飛散物処理を指示
ひび割れ処理の必要箇所を確認
外壁色決定により、塗料発注指示
監理者からのお知らせbU(5/17)
第6週
5/18〜
各面シーリング
鉄筋爆裂補修
ひび割れ補修
左官下地処理
ベランダ換気口の防虫網取り替え指示
軒天の色の検討
鉄部の色の検討
内部階段室の色の検討
第7週
5/25〜
左官下地処理
各面シーリング
ベランダ鉄部錆止め
シンナー臭対策協議
内部階段室 塗料変更
監理者からのお知らせbV(5/30)
第8週
6/1〜
左官下地処理
各面シーリング
ベランダ側外壁下地処理
出来高算定調書の作成
第1回支払い請求書の指示
出来高算定調書(業者)
請求書作成指示書(業者)
第9週
6/8〜
左官下地処理
バルコニー床ピンニング
ベランダ側外壁下塗り
中間検査実施・報告書作成 中間検査報告書(理事会)
出来高算定調書(理事会)
第10週
6/15〜
左官下地処理
ベランダ側塗装仕上げ
理事会開催(中間検査報告・内部色彩)
親睦ジンギスカンパーティーで挨拶
監理者からのお知らせbW(6/17)
第11週
6/22〜
左官下地処理
ベランダ側塗装仕上げ
鉄部仕上げ
ベランダ床防水前下地処理を指示
第12週
6/29〜
各面塗装下塗り
各面塗装仕上げ
ベランダ鉄部塗装
内部手摺の見積書作成指示 監理者からのお知らせbX(7/1)
第13週
7/6〜
各面外部塗装仕上げ
ベランダ床防水
ウレタン防水メーカーと打合せ
第14週
7/13〜
ベランダ防水
内部階段室塗装
外部美装・社内検査
7/18 ベランダ側監理者検査実施
門柱の納まり指示
集会室の塗装仕様の確認
腐食した消火器ボックスの取り替え
外部分電盤の塗装色指示
監理者からのお知らせbP0(7/19)
第15週
7/20〜
ベランダ防水端末シール
外部手直し
内部階段室ドア塗装
外部足場解体開始
7/20 外部全周検査実施
7/25 外部手直し完了検査実施
内部階段室検査
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駐車場区画移動のお願い
請求書作成指示書(業者)
第16週
7/27〜
外部足場解体(完了)
解体時塗装合い番
内部塗装雑・美装
各戸網戸ネット張り替え(オプション)
8/1 残工事工程打合せ確認
監理者からのお知らせbP1(7/30)
工事完了検査報告書(理事会)
竣工書類とりまとめ指示(業者)
第17週
8/3〜
外壁基礎回り補修
玄関タイルピンニング
門柱塗装仕上げ・オイルタンク他
8/5 理事会・専門委員会にて完了検査報告 監理者からのお知らせbP2(8/8)
第18週
8/10〜
全館美装 仮設物撤去 8/9 より「最終確認検査」票を回収
必要に応じて、各戸訪問確認作業
8/12 施工者より、竣工書類一式受理
後始末 自転車置き場撤去(8/5)
集会室内部 ビニールクロス塗装
8/31 「最終確認検査」の手直し事項を完了 工事完了報告(理事会)11/14
監理者からのお知らせbP3(11/26)
定期総会での完了報告11/28

 こうして今回の大規模修繕は、ひとつの区切りを終えた。
 監理者として、例年11月に行われる定期総会での報告も終えた。
 (その心境は、監理者からのお知らせNo13(最終号)に詳しく述べた。)
 
 宿題として、長期修繕計画の見直しが残ってしまったが、今はエネルギーを充電中である。
 
 たまたま、大規模修繕工事の完了を待っていたかのように、帯広への単身赴任という形であたらしい現場が発令になった。
 新しい土地で、新しい仕事を始めるには、相当なエネルギーが必要だ。
 正直に、マンションの仕事も、このHPの更新も、思うに任せなかった。
 でも、大規模修繕から少し身を退いて、自分の軌跡を振り返ったとき、私には深い満足感が残った。
 そして、この満足感を、次なるステップへつなげていきたいと考えている。


◆このページにリンクすべきもの : 札幌塗装工芸との、工事中のメールの交信(全記録)
公開準備中 (落ち着いたら、一気にHPを作る予定。)

◆99年度の計画について

長期修繕計画立案の実際
ロードヒーティング
駐車場の舗装
物置の建て替え
エレベーターのメンテナンス契約
給水管更正との取り組み

・・・などを 次章にて、順次アップロード予定


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