マンション改修の歴史4 (修繕委員会の初仕事)

私たちの「排水管問題」(築後10年目)

専門委員会に突きつけられた、最初の難問

【最初に私見】
 まったく、何が起きるのかわからないのがマンションである。
 私は、建築の施工を専門としている。したがって、建物の骨格(構造)や、表面に見えている部分(仕上げ)についての知識は、持っている。
 ひとの体で言えば、私の専門は外科ということになるだろう。
 ところがマンションの機能は、人体と同じように複雑でいろいろな専門分野の集合体である。
 たとえば、給排水設備。これは人体で言えば、内科・循環器科・泌尿器科の分野に相当する。
 そして、電気設備。人体で言えば、神経科にたとえられよう。
 さらに、エレベーター(昇降機)設備、立体駐車場設備、ロードヒーティング設備など、生活に関わるさまざまな分野の技術が結集されて、マンションはできあがっているのだ。
 ところが、マンションの住人は「建築の専門家」というと、こうした設備の全てについて、専門知識を持っているという過大な評価をしてしまう。確かに1級建築士は、それらの分野の「基礎知識」は持ち合わせているが、けっして万能ではない。
 私たちのマンションにおいて、専門委員会が直面した最初の問題は、まさに、そうした「隙間」に起こってしまった。
 それに、私たち専門委員会のメンバーには、法律に明るいプロがいたわけではない。
 解決への道は、まさに手探り状態だった。
 だからこそ、この問題を解決したプロセスには、他のマンションに役立つヒントが、たくさんあると思うのである。


私たちのマンション(「札幌Pハイム」)の自己紹介は、こちら

排水管問題のはじまり (築後8年目)

 私たちのマンションの排水管問題というのは、こういうことだ。
 入居直後から、管理組合では、排水管の清掃を実施してきた。
 1994年8月(入居8年目)、その排水清掃を終えた配管業者から、理事長に、つぎのような報告があった。
 「高圧ホースで、排水管(汚水・雑排水)の洗浄をおこなったところ、2本の排水管から砂利が混じって出てくる。本来、排水管には砂利が混じることはあり得ないから、1階床下の土間配管のどこかに亀裂が入っていると思われる。放っておくと、汚物が1階の床下に垂れ流しになり、やがて排水管が詰まり、トイレも風呂も使えなくなる恐れがある。緊急工事を実施すべきではないか? 費用は、240万円あまり必要。」 (詳しくは、1994年8月「94年排水管調査書」へ)

 ここで、排水管について最低限の基礎知識が必要になるので、私なりに、解説しておこう。
 まず、1階床下の配管方式には、2種類ある。
 「配管ピット」方式と、「埋設配管」(土間配管ともいう)方式に大別される。

 「配管ピット」とは、下図のように、1階床下に、配管メンテナンス用の空間があり、各種配管(給水管・排水管・雨水管その他)が、1階の床スラブコンクリートから、吊りボルトで支持されているものをいう。
 (ほとんどのマンションは、この方式だと思われる。)

模式図(ピット配管)

 もう一つの、「埋設配管(土間配管)」方式とは、下図のように、1階床下が、埋戻し土によって充填されており、配管の点検は不可能である。
 私たちのマンションは、この方式であり、ひとたび問題が起きると、修繕の方法も困難をきわめることになる。(最近のマンションでは、ほとんど見られないと思われるが、築10年以上のマンションは、いちど確認しておくと良い。

模式図(埋設配管)

 ───さて、知らせを受けた理事会では、緊急役員会を開催し(94.9.2)、配管業者に修繕を依頼した。
 配管業者は、販売会社(かつ建築業者)である、「札幌マンション販売(仮名)」に相談した上で、地中梁(1階の床下の梁)に直径60pの穴を明け、モグラのようにトンネルを掘りながら、漏水個所を探しあて、補修を完了した。
 工事は、配布文書によれば、94年9月19日から、9月30日までの予定であった。(実績は不明)

 さて、この工事は今になって振り返ると、手続きの上でも、施工の上でも、いろいろな問題を含んでいる。
@ 配管業者の申し入れを、チェックしたりアドバイスできる専門家が組織されていなかった。
A 緊急工事ということで、総会に諮る時間がなく、理事会の単独判断で着工した。
B 施工計画のチェックもされず、構造上たいへん重要な「地中梁」に直径60pの穴を明けてしまった。
C 施工結果の詳細な記録が残されなかった。 ……など

 しかし、もし、自分がそのとき理事長の立場だったら、どんな決断ができただろうか?
 (そのころ、私は東京に赴任中で、こうした事故が起こったことを、まったく知らなかった。帰札したのは95年4月である。)

 「緊急事態」ということで、同じような判断をしたかもしれない。理事会を責めることなどできようか?
 もちろん、依頼した業者がきちんとした報告書を提出しなかったからといって、業者を責めることなど、誰ができるだろう?
 ことの重大性を発見し、放っておくと、マンションの生活機能が麻痺してしまうという認識に立ち、みずから進んで、真っ暗な床下に潜りこんで、トンネル状に土を掘り出し、配管の修繕をしてくれたのだから。

 しかし、ことはそれでは済まなかった。
 この配管業者の話では、他のすべての配管にも同じような「兆候」があり、遅かれ早かれ全ての排水管を修理しないと、危険だというのだ。(1995年8月26日 「95年排水管調査報告書」)
 そして、他の全ての配管を、床下にトンネルを掘って施工したら、総額2000万円以上必要だという「見積書」も提出されていた。
 
 結成間もない、私たち専門委員会の最初の仕事は、この難題を解決してほしいという、理事会からの要請であった。

 正直に言って、私自身、1階の床下でどんなことが起こっているのか、想像がつかなかった。
 いろいろな推測は可能だが、データが足りなかった。
 以下に、時系列での取り組みを列記する。

まず、客観的な調査を開始 (築後9年目)

1995.10.21 理事長名で、「(仮称)札幌Pハイム大規模修繕等検討専門委員会」が召集される。
それまでに、専門委員として、4名が募っていた。
会の名称・性格・検討範囲・構成などを検討。
その席上、理事長から「排水管問題」の説明がなされ、資料を配布された。
 別紙 「94年排水管調査書」「95年排水管調査報告書」 参照(既出)
打合せの中で、竣工後満2年のアフターサービス工事を完了してから、建築・販売をした「札幌マンションサービス」との関係がぷっつりと途絶えており、そのことが排水管問題を複雑にしたという反省が生まれた。
排水管問題が発覚した時点で、札幌マンション販売に申し入れをしていれば、240万円の出費もくい止めることができたのではないか?
あらためて、この問題を、札幌マンション販売に伝え、話し合うべきとの結論。
1995.11.29 販売業者の札幌マンション販売と、初会合
この日のやりとりは、「排水管についての話し合い」を参照。
私たち管理組合と、販売業者が最初に話し合いを持った、なまなましい記録である。
1995.12.1 定期総会にて、排水管調査工事を、札幌マンション販売にて実施することを決定。
また、排水管問題は、新理事会に、引き継がれた。
1995.12 雪の舞う中で、札幌マンション販売が、ファイバースコープ内視鏡を用いて、配管内部調査を行った。
すべての配管を調査し、ビデオに録画した。結果は、翌年3月2日 に報告された。
1996.2.7 管理組合(理事会)発行の「マンションだより」の中で、排水管問題については、以下のように簡単に記載されている。
 排水管の補修工事
 12月に実施した、2社による調査結果を踏まえ、修繕専門委員と一緒に検討しいたします。

 この段階で、私たちのマンションの排水管問題は、下図のような状況になっていると考えられた。
 その後の調査結果を総合して考えても、状況の判断は、大きくは変わっていない。

模式図(配管沈下)

排水管修繕のための試験工事の実施 (築後10年目 春)

 排水管の中がどうなっているのか、切り札のように思っていた、ファイバースコープ検査は、思ったほどの成果を残せなかった。
 マンホールから、3mないし5mの地点で、排水管が下方に屈曲し、そこに排水が溜まっていたためで、水中に入ったとたんにカメラの映像が途絶えてしまうのである。
 従って、具体的な「割れ」「亀裂」などを、確認することができなかった。
 専門委員の中には、「建物引き渡し当時から、配管が折れ曲がっていたのではないか? 10年近く使ってきて事故は起きていないのだから、このまま様子を見たら?」という意見もあった。
 どこから、土砂が紛れ込むのか、「確認したくても、できない」という状態の中で、方針を立てねばならなかった。

1996.3.2 【第1回 専門委員会】
 売り主 札幌マンション販売(仮名) 取締役部長 および サービスマネージャーH氏
 管理会社 札幌マンションサービス(仮名) 業務部長
 排水管清掃業者 札幌×××サービス 代表取締役
 (理事 4目 ・専門委員 4名 及び 前年度理事長 が出席)

排水管の調査結果 および 今後の対応について
 マンション側は、「前代未聞の事故で、納得できない。販売会社は、責任を持て」と主張。
 販売会社側は、「経年変化も、地震等の影響もあり、現在の状況も、原因も、推測の域を出ない。」と主張。
いずれにせよ、排水管に何らかの異常があることは、はっきりしているので、協力して、調査していくことを確認。
 とにかく、1カ所調査工事が必要との見解も、一致。
1996.4.10 理事長から、理事・専門委員に対し、4月15日付けで文書を発出する旨、事前確認の通達
1996.4.15 以下2通の文書を全戸配布
 理事長名で「排水管修理のための調査試験工事について
 専門委員会(文責:寺地)から「排水管の現状についての調査 中間報告
1996.5.9 【第2回 専門委員会】
 札幌マンション販売 お客様相談室H氏との打合せ (理事4名・専門委員2名出席)

1.試験工事施工計画書についての協議
 工事の方法について確認・工事着工の時期について・入居者へのお知らせ配布
 札幌マンション販売から、地中梁の下を潜っての、トンネル方式では危険が大きいため、1階の床から作業させてほしいとの強い要請があり、議論の結果、やむを得ず承諾。
2.試験工事の実施についての協議
 札幌マンション販売は、試験工事を実施し、原因の究明・全体工事の方法・工事費用の算定・工事の所要期間などを、詳細に調べて、専門委員会に報告し、それをもとに両者で協議を行い、本工事に向けての基礎資料とする。
3.工事に対する理解と協力要請について
 入居者のみなさんの理解と協力を得るため、集会所において、これまでの経過をビデオ収録した画面により、現状を説明する。
4.臨時総会の開催について
 臨時総会を開いて、今後の対策を話し合い、工事の方法・費用の負担等について決める。
5.1階入居者に対する協力要請について
 じっさいに工事を行う、1階に入居している方々に、協力をしていただくための要請を行う。
6.本工事の着工時期について
 席上、専門委員会から、「排水管の満水試験」の実施を提案する。
1996.5.18 排水管の満水試験を実施。その結果、ほとんどの排水管に異常のあることが判明した。
1996.5.22 満水試験 結果表」へ。
1996.5.26 専門委員として、108号室の床下にもぐって、配管を調査。
(その結果は後述の 6/16配布文書に記載)
1996.5.30 【第3回専門委員会】
札幌マンション販売 お客様相談室H氏との打合せ (理事4名・専門委員4名出席)
 (排水管修繕のための調査工事についての実施計画の検討)
 工事説明会を開くにあたって、細部の煮詰め。
 「第3回専門委員会議事録」に、この日の詳細なやりとりを収録した。
1996.6.7 【工事説明会】理事会が、組合員に呼びかけ、「札幌Pハイム 排水管修繕工事説明会」を開催。
1.経過報告
2.調査結果報告
3.調査工事の実施と、今後のスケジュール
4.質疑応答
 別紙 「排水管修繕工事説明会議事録」 参照
1996.6.12 理事長名で、理事・専門委員に対し通達(工法の変更)があり、6.14 理事長名で「排水管修繕工事の実施について」 を全戸配布
1996.6.16 工事説明会での要望により、理事長からの依頼を受け、専門委員としての見解をまとめ、「その後の各種調査結果の分析と 試験工事の方針について」を全戸配布。

 試験工事そのものを、どんな形で実施するかという問題に関しては、わたし自身が施工の専門家であることから、予想される危険に対して、知恵を出し合うという形で、施工者に対する協力ができたと思っている。
 当初、下図のような「トンネル掘削方式」の施工案に対して、札幌マンション販売も、わたし自身も、作業員と配管に危険が大きいと判断し、説明会でも一貫して、1階の床を破って、そこから掘削する提案をしてきた。

模式図(配管修繕)

 しかし、説明会後、1階の入居者から、理事長に対して、「納得できない」という声が届き、再検討の結果、危険性は高いが、トンネル工法で試験工事を行うことにした。(その経緯は、6/16付け配布文書に詳しい)
 ところが、そのことに対して、「説明会で手続きを踏んできちんと説明したのに、出席しなかった一部の入居者の言い分に振り回されてどうするんだ。」という厳しい批判が、理事長に届いた。
 理事長の心中を察して、胸が痛くなった。
 専門家は技術レベルで考えていれば、与えられた役割を果たせるが、理事長は、常に人間関係の中で振り回されるということを、この一件で感じた。
 以上は、余談であるが、こうした改修工事には似たような苦労話が、かならずあると覚悟されたい。

排水管修繕費用の交渉と、工事の決定 (築後10年目 夏)

1996.6.18 107号室床下を掘削する試験工事開始。予想通り、かなり危険を伴う作業であった。
4日間程度で、工事を完了。
1996.6.30 【第4回 専門委員会】
 札幌マンション販売 お客様相談室H氏との打合せ  (理事3名・専門委員4名出席)

1.排水管修繕のための試験工事結果について 札幌マンション販売からの報告
 別紙「報告書」(下記の改修案と、同じページにリンク)
2.今後のスケジュールについて 他
 108号室床下掘削に 土工15人+配管工 を要した。
 105号室床下掘削に 土工10人+配管工 を要した。
 このペースで、全体を施工すると、総額は 1,000万円を超えると思われる。
 これに対し、札幌マンション販売から、「排水管改修案」という提案書が提出された。この中で、工事費の30%を、協力金という形で、施工者が負担したいとの考えが示された。
 30%を負担するという根拠は何かという問いかけがあり、文書で回答してほしいと要望する。
1996.7.4 【第5回専門委員会】 (記録不明)
1996.7.12 【第6回専門委員会】
専門委員として、理事会に対し、「1階床下排水管の問題に関する考察」を報告。
工事費用の負担率について、札幌マンション販売への提案内容が検討された。
この提案を盛り込んで、7.15の折衝がもたれることになった。
1996.7.15 理事会と、札幌マンション販売との折衝
札幌マンション販売から、「排水管の報告書2」が提出された。
それに対して、札幌マンション販売の社長宛に「排水管修繕工事について」という、実質的な要望書を提出した。
1996.7.25 【第7回専門委員会】
 札幌マンション販売 お客様相談室H氏との打合せ
このとき、札幌マンション販売から、「『排水管修繕工事について』の回答書」が、提出された。
工事金額の50%を協力金として、負担するという提案がなされた。
1996.7.29 理事長・寺地専門委員と、札幌マンション販売 との折衝 (結果的に、これが最終折衝ということになった)
(この日の、生々しいやりとりも、「『排水管修繕工事について』の回答書」に収録したので、参照されたい)
1996.8.1 【第8回専門委員会】
先日の、札幌マンション販売との打合せ結果を、全員で検討。
札幌マンション販売の提案を受け入れる方針を固める。
1996.8.26 臨時総会を開催
修繕工事としての位置付けで、工事発進。
別紙 「臨時総会議事録」参照

排水管修繕工事の実施 (築後10年目 秋)

 臨時総会で承認された、排水管修繕工事は、夏の暑い盛りを避けて9月から始まった。
 理事長は、各棟の工事の要所で、立ち会い写真を撮影し、ビデオにも記録してくださった。
 札幌マンション販売のH室長も、要所を確認して、誠意ある対応をしてくれた。
 工事というのは、走り出すまでに、仕事の9割が終わるのだと、このとき実感した。
 ふだん、工事が決まってから走り出す立場にいる私にとって、すべてが勉強になった。

1996.9. 掲示板に、工事着手の案内を出し、工事開始
(正確な記録が、私の手元には残っていない)
1996.10.11 一部を除き、工事完了
 土工さんたちは、土砂を掘り出し、復旧するのに、毎日泥だらけになって床下に潜ってくれた
 配管工さんたちは、狭いトンネルの中で、汚水配管を切り取り、新品に復旧してくれた。
 狭い、暗い、臭い悪条件の中で、私たちのために働いてくださった人たちに感謝。
1996.10.12 理事長名で、「排水管修繕工事終了のお知らせ」を全戸配布。安堵感がにじんでいる。
1996.11.21 【第9回専門委員会】
 札幌マンション販売 お客様相談室H氏との打合せ (理事4名・専門委員4名)

 「札幌マンション販売」から、工事費用についての「完了報告」が提出され、管理組合が負担する分の請求について申し入れ。理事長指名により、専門委員の中で、工事単価にいちばん詳しい私が、内訳をチェックして、内容を承認。
 理事会として、担当窓口になってくれた「お客様相談室」のH室長に謝意を表す。

 こうして、1995年9月から、翌1996年11月まで1年以上かかって、排水管問題は決着を迎えた。大規模修繕に向けて、準備を始めようと思って結集した4人のメンバーにとっては、出鼻をくじかれたように感じた事件ではあったが、度重なる専門委員会の会合の中で、忌憚なく意見をぶつけ合い、基本的には多数決という手段を一度も使わずに、全員が合意する・納得するという形で、方針を決めることができた。その中でのお互いの信頼関係は非常に強いものになったと思う。

 また、販売会社(建設会社)である「札幌マンション販売(仮名)」の誠意は、どこからきたのかと、考えてみた。
 それは、私たちとの対応窓口として、度重なる夜間の会合に顔を出し、私たちの要望をきちんと受け止めて、会社に伝え、あるいは会社を説得して下さった「お客様サービス室」のHさんの存在によるものだろうと、私は思う。
 この方が、精一杯尽力してくれたから、建築後10年もたったマンションの排水管修繕を半額引き受けてくれる結果になったと思っている。これは、私たち専門委員の一致した見解である。
 施工に携わる立場の人間として、H氏に共感を覚え、あらてめて心からお礼を申し上げたい。  (1998.7.20 記す)


【後記】
 排水管問題について、手元に残っている膨大な資料を、どのように公表すべきか、ずっと悩んでいた。
 私の住むマンション側のプライバシーもさることながら、微妙な話になると、お世話になったH室長さんに、個人的に迷惑をかけるおそれがあったし、販売会社の行為にも、水を差すことになりはしないかと恐れた。
 たとえ、解決から2年が経過したとは言え、である。

 当初、HP本文の公開から2カ月後の、1998年9月20日のアップロードを考えていたが、サラリーマンである私の事情(単身赴任)によって、それは実現できなかった。
 それでも、とにかく、こつこつ打ち込んで準備していた。
 そして、1998年10月31日の朝刊。
 昨年暮れから、心配していたことが起こった。
 私たちのマンションの販売会社が、倒産したとの報道である。
 北海道内で、累計10,000戸近い住宅を供給し、株式店頭登録を果たした「札幌マンション販売(このHPでの仮名)」も、メーンバンクの拓銀破綻の影響を受け、資金調達が苦しくなったことが主因と報じられた。

 この報道をきっかけに、私も気持ちが吹っ切れた。

 手元に残る、すべての資料をオープンにする方針を立てた。
 すべての文書に目を通し、似たような文章が並んで、くどいとも思ったが、何事かを交渉し、何事かを成し遂げるには、エネルギーがいるのだということを、再確認する思いがした。
 似たような問題で、困っている理事会にとって、これくらいのボリュームの作業になるという「見本」を提示できれば、と思った。
 蛇足だが、けっして「お手本」とは言いがたいので、あしからず。

 それでも、こうした「生の情報」の公開こそが、いちばん必要なことだと、信じて。

 末尾ながら、職を失った もと札幌マンション販売の、Hさんのこれからのことを、心から祈りつつ。
  (1998.12.27 記す)

◆後日記◆ 
札幌マンション販売のHさんは、その後、大手の管理会社に職を得て、1級建築士としての技量を発揮されている。
今では、ともにマンション問題を語り合える貴重な友人のひとりである。(2000.12.30)

(排水管問題についての章は  1998.12.27 Upload)
(1999.1.10 一部修正  2000.12.30加筆)


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