札幌Pハイム大規模修繕等専門委員会
標題のことにつきまして、専門委員会から、理事会にご報告いたします。
1.配水管を埋設する工法について
土間下の埋戻し部分に、配管を埋設する工法は、このマンションの新築当時、通常に広く行われていました。その工法の選択自体には、問題はありません。
が、下記の理由から、最近では一般的ではなくなってきました。
@マンションの構造体の耐用年数より、配管類の耐用年数が短く、その補修工事のためには、配管ピット方式が望ましいこと。
A今回の事例と似た事故が、他のマンションでも起きていること。
2.問題の発生する原因
埋戻し工法の要点は、配管下部の埋戻し土の「締め固め」に尽きます。
そのことを、施工の教科書である「建築工事施工監理指針」には、下記のように記しています。
(埋戻しには、砂質土が望ましいが、掘削土中の良質土を使用することができる。)
(締め固めは、透水性の良い砂の類は水締めとし、透水性の悪い粘土質等の類は厚さ30cm程度ごとにランマー等で締め固めながら埋め戻すのが原則である。また、建物周囲の深い根切りの部分は機械で締め固めるのが困難なので、透水性の良い砂の類を使用し、水締めをする必要がある)
(要旨を抜粋)
建物総体の埋戻しが、教科書通りに行われていれば、経年変化による土の沈下量も、そう大きな数字にはならないと考えられます。
すなわち、配管の埋設工法は、埋戻しが正しく行われていれば、問題も発生しにくいので、現実に多数の建物がこの工法で建てられております。
しかし、実際の施工の現場は、なかなか教科書通りには施工する事ができません。
たとえば、雨が降ると、機械による締め固めができませんし、工程の遅れを取り戻すために、配管工事も無理をすることになります。
また、埋戻しをする業者(土工)と、配管をする業者(配管工)が、別々なため、正しく埋戻しがされることを前提にした埋設工法に不具合が起きても、それは配管工の施工が悪いのか、土工の埋戻しが悪いのか、責任の所在が明らかになりません。すべては、土中に埋もれて見えないからです。
しかし、このマンションの建築当時、埋戻しを100%完璧に施工する事は困難であり、それを前提にした埋設工法に問題があることも指摘されていました。
そこで、「良識ある」配管業者は、埋戻し土が沈下しても問題が生じないように、配管を吊ったり、支えたりする金物を配置して、問題の発生を抑制していました。
つまり、問題を発生させないためのポイントは、次の2点に集約されます。
@土工事で埋戻しを、正しく施工すること
A埋戻しを正しく施工することが困難ならば、配管で支持金物を取り付けること
このいずれかを施工していれば、問題の発生は防げると考えられます。
3.当マンションの床下の状況
今回、108号室・105号室・107号室の床下掘削状況を確認し、いくつかの事実が判明しました。
まず、埋戻しに関して。
@土質は、掘削土中の良質土とは言えず、埋戻しに適さない土質も含まれております。
A埋戻しを30cmごとに機械転圧した形跡は認められません。
次に、配管に関して。
B支持金物が全くないわけではないが、その位置は「埋戻し土が沈下しても配管が沈下しないように」設置されたのではなく、単に配管の施工上必要で設置したものと考えられ、前述したような役割を果たしているとは言えません。
これらを見ると、埋戻しも、配管も「埋戻し土は沈下する」ということに対する配慮が足りず、結果として、配管のほぼ全数で配管が沈下し、たわみ、一部で欠損するという被害が生じたと考えられます。
すなわち、良心的な施工をもってしても、地震その他による経年変化として、土と配管が沈下することがあるという言い分には、とうてい承服できません。
4.2年瑕疵の問題
契約上の2年かしの問題に関して、「施工に問題があったなら、2年以内に被害が発生するし、またそういう事故が実際に起き、無償での修復もしている」との主張があります。
業者側の論理としては、そのような主張もやむを得ないのでしょう。
しかし、被害の発生が8年目に始まったとは考えられず、102号室での配管取り替え工事(残念ながら、正確な記録はない)の時点で、本来は全館の一斉調査をするべきであったと考えます。
その時点で、たわみの問題は発生していたであろうと考えるのが自然です。
5.専門委員会の見解
今回の配水管被害は、法律的なかしについて白黒をつけるのではなく、メーカーの良心を問う形にしなければ、不毛な論議となるでしょう。
この報告書も、マンション組合員の皆さんに配布すると、収拾がつかなくなると考えます。
この報告書の扱いは、理事会のご判断に委ねたいと考えます。
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