水道料金問題とは?

【私見】
 知らないでいると、バケツの底に穴が空いたように、知らない間に自分の財産が流出していく。
 気がつかないでいると、いつまでたっても、誰もその穴をふさいでくれない。
 そういうことが、世の中にはたくさんある。
 マンションの水道料金は、そういう事例の一つであることを知っているだろうか?

 とにかく、マンションの決算書を見てみることだ。
 そして、水道料金会計が、もしも赤字になっていたら、この章をじっくり読んで、明日にも行動を起こして欲しい。
 財産の流出を食い止めるのは、他の誰でもない、あなただ。
 だれかがやってくれるだろうと考えている間は、お金が流れ出していくのを止められない。
 そのことをお知らせするのが、この章の目的である。

 この章は、理解しやすくするために、敢えて、メール往来の形にした。
 しかし、作り話ではない。
 私の知っている3つのマンションでじっさいに起こったことを、ひとつにまとめただけである。

第一話 水道料金が赤字?

 2000年10月×日 札幌市内・Aさんからのメール 1

 寺地さん、ごぶさたしています。
 きょうは、プライベート・メールです。
 じつは、今年の6月、北区のマンションに入居しました。築4年目で70戸。私が最後の1戸に入居したことで、全戸完売になりました。
 来週の日曜日に、定期総会があるとのことで、今日、議案書・決算書が届きました。
 右も左も分からないのですが、私も総会に出席し、前向きに勉強したいと思います。
 決算書・予算書のどういうところを見たら良いのか、私でも分かるようなことがあったら、教えてくれませんか?
 別便にて、とりあえず、決算書・予算書を送ります。 

◆ Faxで送られてきた決算書(の一部) ◆
収入の部 支出の部  
左の表は、Aさんから送られてきた決算書の一部を転載したものである。
 気になる点はいくつかあったが、管理費の決算書をはじめて見るAさんにもわかる「問題」だけを指摘することにした。

 第一に、繰越金が約10万円減っていること。
 すなわち、管理会計が単年度で赤字になっていることを、読みとらなければならない。
 家計管理でもそうだが、赤字であると自覚すればこそ、なんとか正常な形にしようという意志が働くものである。その自覚を持つかどうかで、組合経費の垂れ流しを回避できるかどうかが決まると言っても過言でない。

 第二に、水道料金会計が約11万円ほど赤字になっている。今回は、これに着目することにした。
  
前期繰越金 1,279,775 上下水道料金 3,170,706
管理費 4,3**,*** 共用電気料金 1,4**,***
駐車場使用料 4,6**,*** ガス料金 10*,***
雑収入 2,*** 組合運営費 12*,***
上下水道料 3,063,434 保険料 34*,***
    什器備品費 15*,***
    小修繕費 26*,***
    除雪費 94*,***
    雑費 16*,***
    管理委託費 3,2**,***
    業務経費 1,1**,***
    繰越金 1,117,088
合計 13,3**,*** 合計 13,3**,***

 【寺地から返信】

 やあやあ、久しぶりだね。マンションに、入ったんだって? じゃ、これからしっかり勉強しなくちゃ。
 (中略)
 さて、決算書・予算書を拝見しました。
 単年度で赤字決算になっていることも気になるのですが、そのいちばん大きな原因は、水道料金の赤字です。
 水道料金も、管理会計といっしょにして収支決算をしていますが、これは本来管理費ではありませんので、別会計にすべきものです。
 別会計にすれば、明らかに赤字になっていることが分かるのですが、こうしてまとめてしまうと、赤字になっていることを見逃してしまうよね。
 総会には、管理会社の担当者が来るはずだから、「なぜ、水道料金が赤字決算になっているのか?」と、質問してみてください。
 そして、その質疑応答を、総会の議事録に書いてもらうようにしてください。
 もし、書いてくれなくても、そのやりとりを、総会に出席した皆さんの印象に残るような工夫をしてみてください。

2000年10月×日 札幌市内・Aさんからのメール 2

 なるほど、たしかに水道料金が赤字ですね。
 まったくの無知な質問ですが、他のマンションは赤字にはなっていないのですか?
 私は、この10万円くらいが、共用部で使った分なんだなと思っていましたが、違うのですか?
 質問をするのに、それくらいは知っておきたいので、教えてください。

【寺地から返信】

 分かりました、明日が総会でしたね。
 まず、共用部の使用量は、あなたの規模のマンションでは、3万円から5万円くらいで、十分におさまります。
 水道料金のシステムのことは、追ってお知らせしますが、このことだけは覚えて置いてください。
 70戸のマンション各住戸に対して、札幌市水道局が一戸ずつ料金を請求・徴収するのと、管理組合に対してまとめて一括請求・徴収するのとでは、どちらが経費がかかりますか?
 もちろん、札幌市としては一括請求、一括納金のほうが、ずっと簡単でしょう?
 だから、札幌市は条例をつくって、集合住宅(分譲マンションに限らず、社宅でも同じです)に対して、徴収をとりまとめてくれる管理者(つまり、管理組合)に利益が出るシステムを取っているのです。
 だから、入居者から正しく徴収し、水道局に正しく支払っていれば、共用部分の使用量を補填しても、まず赤字になることはありません
 そのことは、他の多くのマンションの事例でいくらでも証明できます。
 赤字になるのは、徴収・支払いシステムのどこかに間違いがある可能性が高いのです。
 まずは、自信をもって、質問してください。

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