マンションのこれからを考えるために

 マンションの未来を考えるとき、私にはふたつの展望がある。

 ひとつは、マンション単体のコミュニティ構築を通して、日本人の自治意識や民主主義が育っていくという夢である。その延長上に、マンションネットワークや、地域コミュニティをとおしての子ども達の教育という問題がある。
 日本中に存在するマンション管理組合組織は、さまざまな制度疲労を抱えていると感じていたら、2000年秋には、東京では集合住宅維持管理機構の解体というショッキングな事件が起きた。新しいマンションネットワークがどうあるべきかという、お手本は、なかなか見つからない。しかし、全国各地で、有志がさまざまなネットワークを構築していることは心強い。NPOぽんぽこは、特殊な形ではあるが、ひとつのお手本だと思う。
 
 いっぽう、このくにの住宅レベルの貧困さは、目を覆うばかりである。
 マンションにおいては、誰の目にも明らかな、ふたつのわかりやすい欠陥がある。
 それは、上下間の騒音問題と、外壁の結露・カビの問題である。(その他に、シックハウス問題がある)
 ふたつとも、戦後日本が「とりあえず、不足している住宅を出きる限り安価につくる」ことに徹したために、無視されたことだと、私は認識している。そんな中で、マンションに結露・カビを蔓延させたのは、国の無策が招いたのだと主張する本が出版された。
 やっと、日本でも100年スパンで建築を考えようと、声を出す人が増えてきたように感じる。
 その趣旨には、全面的に賛成したい。
 マンションの騒音を少なくする改修工法も、一般に普及することを祈りたい。
 
 (2001/1/31 Upload

多摩ニュータウン発市民ベンチャー
NPO「ぽんぽこ」
富永一夫
NHK出版  ISBN:4140805064 (2000/4/20 出版)
1,300円   B6  209p
「NPOフュージョン長池」理事長・富永氏の奮戦記
1.地域に帰ってきたお父さん・・・身近なコミュニティ活動とNPO
2.人との出会いから生まれたもの・・・地域活動のFUSION(融合)
3.時代の風にあと押しされて・・・インターネットが生み出すパワー
4.ぽんぽこな「こころ」に法人格をもたせよう・・・NPOフュージョン長池の設立に向けて
5.ボランティアとビジネスのはざまで・・・認証手続きと事業活動の模索
6.市民ベンチャーとしてのNPO・・・暮らしの支援事業がスタート
 東京・多摩ニュータウンで仕事をした。宿舎のすぐ近くが、本書の舞台である長池地区である。そういう個人的な思い出もあり、ワクワクして読んだ。マンションには、さまざまな専門家の人たちが住んでいる。その力を結集すると、こんなこともできるのかという、夢を与えてくれる。市民ネットワークの参考書として、一読の価値がある。


日本のマンションにひそむ
 史上最大のミステーク
赤池学・江本央・金谷年展 著
TBSブリタニカ ISBN:4484992086  1999/7/8 出版
1,600   B6 253p
1.あなたの周りにある悲劇
2.日本のマンションはすべて根本から間違っていた
3.日本の常識は世界の非常識だった
4.本当に人の健康と命を守り、財産を守り、地球環境を守るマンションはこれだ
5.生活者と地球を守るための提言
附録・・・湿り空気線図について
 マンションを冠した書物の中で、これほど建築関係者の物議を醸した本は、ないのではないか。著者らの主張は、建築環境論における常識であり、これがアカデミックな書物であれば、目新しいものではない。しかし、内断熱を間違いと断じ、敢えて官・学を敵に回すエネルギーには圧倒される。北海道における外断熱建築への地道な取り組みを無視するなど、内容を全面的に支持する気はないが、私も、外断熱建築を4棟つくってきた経験から、p146を読んだときは溢れるものをこらえることができなかった。日本の建築に一石を投じた功績は大きい。目下、私の最大の課題は、マンションの「外断熱改修」の仕様書づくりだ。

 

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