理事会の本棚にぜひ一冊(管理・運営の教科書)

 マンションを購入すれば、自動的に区分所有者としての権利と義務(責任)が生じる。
 この大前提を分かっていないひとが多すぎる。国民の三大義務=勤労・教育・納税の義務と同じように、マンションの入居者には、さまざまな責任が生じる。責任を果たすためには、最低限度の知識が必要となる。どうせ、勉強するなら、少しでも楽しく、わかりやすい本を選ぶべきであろう。
 ここに並べた本は、私自身も勉強しながら成長してきた、なつかしい本ばかりである。
 マンションは、最小単位の自治体と考えるべきである。自治は、そのための能力と努力なしには成立しない。

 (2001/1/26 Upload

マンション管理組合テキスト  ―小さな自治体をめざして
住生活研究所
学芸出版社  ISBN:476152152X  (1996/5/10 出版)
2,400円  A5 237p
 新しい市民社会を切り開くマンションライフのエキスパート「マンション・マネージャー」を育て、居住者が共同してなかよく住みこなすためのマニュアル。

1 管理組合の運営
2 建物・設備の管理
3 マナー、ルールと区分所有法
4 マンションライフの価値
5 マンションのコミュニティ活動
6 生活者の経済活動
7 地域社会とマンション
8 マンション居住者のネットワーク
9 管理組合・企業・行政のネットワーク
10 建替・増築
 簡潔にして、明快。「テキスト」の名に値する、良書である。個人的には、この本をいつでもバイブルのように使っている。


管理組合役員のための手引き   マンション管理に役立つ用語1000
日本総合住生活(株) / マンション相談センター
日本総合住生活(株) ISBN:4795260656  1997/4/12出版
3,000   A5 399p
図版を多くして、分かりやすさにつとめた、マンション管理の1000語事典
◆ALC板 に始まり、ワンルームマンション で終わっている。
黒字と赤字の二色刷。
区分所有法の全文も掲載されている。
 ハードウエア(建物・設備・維持・修繕)の用語と、ソフトウエア(管理組合運営)の用語が、とにかく50音順に並んでいる。ハードウエアの説明は、機能別、分野別のほうがわかりやすいと考えるのが専門家で、ある用語がどの分野の言葉なのかさえわからないのが素人だとすれば、本書の存在価値は十分にある。高校時代の、受験参考書を思い出すような作りになっている。本書は、理事長宅の「電話の横」にあると便利な一冊である。理事長を経験しないと、その意味は理解できないかもしれないが。


実務法律学全集〈14〉 マンション紛争の上手な対処法
  ―紛争の現場からみた法的解決ノウハウ
日本マンション学会  法律実務研究会
民事法研究会 ISBN:4896280105  (1998-04-25出版)
5,300円  A5 561p
 日頃、マンションの現場で紛争解決や管理業務の指導をしている弁護士が、体験と研究の成果を踏まえてまとめた手引書。 マンションの現場で起こりうるあらゆる紛争とその解決指針を明示するとともに、関係判例や通達をも収録した決定版。 あらゆる紛争に迅速・的確に対処できる手引書。
第1章 総論
第2章 マンションの建築と紛争
第3章 マンションの購入にかかわる紛争
第4章 マンションの管理体制と紛争
第5章 マンションの財務についての紛争
第6章 マンションの日常生活を巡る紛争
第7章 マンションの補修・復旧・建替えを巡る紛争
第8章 不良入居者を巡る紛争
第9章 判例総覧・関係通達
 紛争のレベルになると、法律的な知識がないと、方針さえ立てられない。けっきょくは、このようなレベルの参考書が、理事会に一冊は欲しくなる。これを読んでから、弁護士に相談だ。


マンション管理費はここまで節約できる
福崎 剛
ネスコ/文藝春秋  ISBN:4890360840 (1999/9/2出版)
2,000   B6  220p
著者は、これまでに出版されたマンション管理の本とは一線を画す視点で、具体的な事例と金額を豊富に掲げて、数字でマンションの「自立」を促している。
1.マンション管理費はもっと節約できる
2.管理会社まかせは泣きを見る?!
3.保守点検費用の適正価格は?
4.管理組合が自立すれば、快適マンションライフ
 なんと刺激的なタイトルだろう、と本書を見たときに思った。内容を一読し、切り口が鮮やかだと感じた。具体的でわかりやすい。本書の内容全てに、両手を挙げて賛成ということではないが、書いてあることはフェアである。とくに、管理費という、居住者がもっとも関心を持っているテーマで、管理組合の自立を訴えていることは、大賛成である。真っ先に、主婦に読んでもらいたい本。マンション管理は、主婦のセンスが不足している。


管理組合運営のための
 マンション・トラブル百科
集合住宅管理組合センター
集合住宅維持管理機構
ビジネス教育出版社 ISBN:4828396071  1996/11/15発行
1,500円   B6 207p
第1部 マンション管理の基礎知識 では、管理組合運営のチェックポイント・マンション維持修繕のチェックポイントを、わかりやすく解説している。
第2部 相談事例 では、契約・お金・管理員・管理組合・理事会・共同生活のルール・維持保全などのテーマで、約80項目の Q&Aを掲載している。
巻末には、集住センターの歩みが掲載されている。
 一読して、東京がうらやましいと感じた。こういう相談事例を、回答できるスタッフが揃った組織があることに対してである。文章は平易で、わかりやすい。


絵とき ビル設備基礎百科 早わかり
設備と管理編集部 編
オーム社雑誌局  ISBN:4274947955 1999/4/20発行
3000円   B5 338p
ビルメンテナンスの基礎用語集。図版が多く、素人にもわかりやすい。
空調設備・給排水設備・電気設備・消防設備・建築関連・建築環境・衛生動物・環境衛生 各分野についての基礎知識が、見開き2ページ単位で紹介されている。
 ビルメンテナンス担当者の実務百科を意図して書かれており、2000語の解説がされているとのこと。
 廊下を清掃するワックスひとつとっても、油性・水性・樹脂性があることをご存じだろうか? 消防設備とはいったいなんぞや? エレベータの構造はどうなっているのか? そうした疑問に答えてくれる良書は少ない。専門的に過ぎれば読んでも理解できないし、あまりに平易では単なる国語辞典(言い換え)になってしまう。
 本書は、図版が多くて、一目瞭然なのがよい。文章を理解できなくても、図解なら理解できるというモノ。
 各種契約を結ぶ理事会として、こんな本が一冊有るとたいへん役に立つ。


別冊 法学セミナー No162
基本法コンメンタール マンション法
水本浩・遠藤浩・丸山英気 編
日本評論社  1999/10/20 第2版発行
2400円    B5 245p
○建物の区分所有等に関する法律
○被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法
○資料
 中高層共同住宅管理規約(注釈付き)
 中高層共同住宅標準管理委託契約書・同コメント
 諸外国のマンション法(ドイツ・フランス・アメリカ)
 コンメンタールは、ドイツ語で法律の逐条解説の意。学生時代、法学部の学生と同居していたので、試験前になると、机の上にコンメンタールが積み上げられ、畏怖したことを覚えている。この経験がなければ、区分所有法のコンメンタールを探して見ようとも思わなかったに違いない。まさか、私がコンメンタールを手にするとは、当時夢にも思わなかった。なぜ、区分所有法が生まれたのかという成立過程を知っておくことは、私にとって単なる知的好奇心の領域ではある
 理事会レベルでは必要ない本であるが、ネットワークを作る意欲のあるひとは、本書を通読しておくくらいの勉強が必要だろうと思う。

 

本棚へ戻る