水道料金問題とは・・・9(完結編)

【私見】
 本編に登場するAさんも、彼の住むマンションも、札幌市内に実在する。
 フィクションでスタートしたのなら、あっさりと完結編を書くことができたのだが、それではリアリティに欠ける。
 「具体的で生々しい情報にこそ価値がある」と信じ、私は、「完全な解決」を見るまで、じっと公開を我慢することにした。

 2001年春から、2年近くこの問題の「完結編」をお届けできなかったのは、以下に読んでいただくような事情があったからである。

 期せずして、管理会社の対応が常に良心的であるとは限らないという事例になった。
 でも、マンション住民がちゃんと勉強すれば、こういう会社と交渉することも難しくないということがわかる。

 では、最後の詰め
 Aさんにとっての、長い長い闘いの結末を見ることにしよう。

 理事でない、ふつうの区分所有者の立場で、マンションを動かすことがどんなに大変か。
 そして、さいごにおいしい酒を飲むことができたのだろうか? 
   

第九話 管理組合、動く

2001年8月×日 札幌市内・Aさんからのメール 16

寺地さん、 ご無沙汰しています。

当マンションの「臨時総会」が、来月初旬に 開催されます。
 議案書には、「水道料金の問題」とあります。
         管理会社の入居者数申告ミスについて
         遺失利益の請求について

 理事会と管理会社が、何らかの交渉を持ったと思われます。
 長い時間がかかったが、やっと決着しそうです。 

2001年9月×日 札幌市内・Aさんからのメール 17

寺地さま
  一年越しの水道料金に、やっとけりがつきそうです。
  数字は添付ファイルを御覧あれ!!!!!

臨時総会に先立って行われた合同役員会(理事会+自治会)にて明らかになりました。
 1  約60万円強の差額が生じています。理事長が水道局で調査依頼した額です 
    役所で計算してくれた金額なので 間違いないと思うとのこと  

 2  管理会社の担当者は手落ちを認めていて、全額返還に応じる様子とのこと
    お金は管理会計の水道料金の項目に戻す。

 3  賠償金の請求について
    賠償金は請求しないが、管理会社社長名での謝罪文を要求する  

   以上 水道料金についての報告です。

私見
 自分で問題提起し 寺地さんはもちろんのこと、理事長はじめ たくさんの人にお世話になりました。
 途中でイライラしたり もうダメかと思ったりしたが、何とか解決出来そうです
 
 最初乗り気でなかった人たちも これが起爆剤となったのか、今回の会議では、活発な意見交換があり、このマンションは大丈夫かな と 思いました 
 
 長い間有り難うございました
 
 じつは、新しい問題です。
 印鑑と通帳を、どちらも管理会社が持っていることが判明。
 理事会としては、水道料金問題が解決したら、次はこの問題を取り上げるとのことです。

【寺地から返信】

 やった! おめでとう。 じつに、長かったね。

 でも、通帳に入金されたことが確認するまでは、気を抜かずに
 管理会社から、通帳を取り戻すにも、エネルギーが要りますよ。

2001年9月×日 札幌市内・Aさんからのメール 18

 寺地様

 きょうは、管理会社の取締役部長と、当マンションのフロントマンが出席して、臨時総会でした。

 水道料金の件についての結論です。
     9月×日迄  管理会社社長の謝罪文を理事会に提出しなさい。
    10月×日 決算報告終了後 特別会計に返金しなさい。

 これに対して、管理会社は、「来期の管理費との相殺にしてほしい、社内事情もありますので、お願いします。水道料金の差額は、メーターの故障かもしれないし、水道局でデータを出してくれない。」などと言い出しました。

 理事の一人が、「去年の総会での適当な答弁に加えて、この1年間、あんたがたは、いったい何をやっていたんだ? 我々が動いたから、水道料金の差額に気がついたのではないか。冗談じゃない、すぐ差額のカネを振り込んでくれ。」と

 私は、「理事の皆で署名を集めて、一所懸命やってくれた結果、水道料金が下がったのです。管理会社は、何もしなかったじゃないか。」と話しました。

 おかげさまで 何とか決着の様子です。
 寺地さんのメールの言葉にもあったように 入金まで確認します。

【寺地から返信】

「ふざけたことを言うな、おまえのところに来年も頼むと思っているのか!」
Aさんは、そう言ってやりたかったのでしょうね。我慢ですよ。

以上、ここだけの話です。

 2001年10月×日 札幌市内・Aさんからのメール 20

 おかげさまで やっと 10月×日に 6××,×××円 通帳に入金されたことを確認しました
 色々ありがとうございました

 昨日 定期総会が開催され 以上の報告がありました。

 当初の目的である 水道料金の返還という結果には大変満足しています。
 自分で調べて 理事会に動いていただき 管理会社とのやり取りについても 知識や知恵をお借りでき、大変お世話になりました ありがとうございました

 しかし マンション全体の盛り上がりが今ひとつでした。
 お金が返ってくるというのに 理事会自体も何か さめていた。
 住民に広報する、知らせることが欠けていたと 反省しています

 管理会社の社長の謝罪文については 管理会社と理事の間で、話し合いがもたれたようです。
 総会の議事録に謝罪文(誰の名か不明です)を添付することで 落着したとのこと。

 通帳と印鑑については、すったもんだがありました。(後略)
 まだまだ、トラブルが長引きそうです。

【寺地から返信】

 通帳と印鑑の問題から、端を発して、ぼくのマンションでも管理会社の変更に踏み切ったのは、ちょうど1年前です。
 Aさんのマンションでもそういうことになるのなら、こちらの経過をすべてお知らせします。

 水道料金の解決で見せた「自主努力」を続けるなら、あなたのマンションは生まれ変わる可能性がありますね。
 でも、管理会社を変更するかもしれないなら、それが決着するまで、この問題の解決編をHPに公開するのは控えたいと思います。
 時間が掛かっても良いのです。拙速は禁物。
 これからも一緒に頑張りましょう。
 ともあれ、一年間、お疲れさまでした。

Aさんのマンションでは、管理会社の対応に不信感を持った理事会が、
通帳・印鑑の問題をきっかけに、管理全般を見直すことにした。
そして1年後の2002年10月に、Aさんのマンションは管理会社を変更した。

その間、いろいろな問題が噴出し、私はAさんの求めに応じてアドバイスを差し上げた。
ただし、私はこのマンションの理事会には、一度も呼ばれていない。
すべては、私とAさんとの個人的な交流の中で解決してきたことである。
解決編をHPに公開できなかったのは、以上の理由による。

Aさんの「水道料金問題」は1年の長きに及んだ。
彼が理事であったら、もっともっと早い展開だったに違いない。
それでも、一連の動きを振り返って「解決のポイント」を探るならば、
Aさんが、町内会(自治会)の役員になったことだと思う。
第六話 マンションの中に仲間をつくる

ひとりでは何もできないのがマンションである。
だからといって、理事でなければ何もできないということではない。
Aさんの物語は、たんに水道料金問題を解決したという話ではなく、
マンションを変えていく方法論のヒントになりうる。


この話もやっと解決した。
私は、Aさんからの酒の誘いを じっと待つことにしよう。
(2003/4/4 UP)
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水道料金問題は、以上で完結しました。ご愛読ありがとうございました。