マンション改修の歴史5 (機械設備の修繕)
【最初に私見】
私は、マンションの管理について、まったく無知であった。
多くのひとがそうであるように、新築マンションを選んだときは、間取りと設備と立地条件、そして懐具合を天秤にかけた。
管理会社がどこだなんて、気にもしなかったし、組合運営にも関心がなかった。だから、流されるまま、みんなおまかせ。
理事会でどんなことが話し合われ、どういう経過で、何が決まっていったのか、今となってはわからないことも多い。
年に数回発行された、「管理組合だより」という公式な配布文書には、「結論」しか書いていないからだ。
そんな私が、大規模修繕は自分の専門分野だからと手を挙げて、専門委員会を組織し、次々と発生する問題に取り組んで4年が経過した。
2年掛かりで大規模修繕をやり遂げ、やれやれと安堵したのが、1998年秋のこと。
しかし、それも束の間、エレベーター保守会社から、管理会社に宛てた「御見積書」が理事会に届けられた。
エレベーター機械室にある、制御盤のボードやリレー類を更新すべきで、4基の合計で580万円かかるという見積もりだった。
やっとの思いで、大規模修繕を1000万円近く節減し、これを基金にして、次の配管設備更新を見据え、じっくり時間をかけて準備していこうと考えていた矢先に、580万円もの修繕の提案が出てきたのである。見落としていた私自身の「未熟」を思い知った。
ところで、管理会社のつくった、「長期修繕計画」では、エレベーター修繕の費用について、どう予算化しているのか? と、あらためて見た。
私のマンションでは、管理会社経由でメーカー保守会社と、「部分メンテナンス(POG)契約」をしていたから、経年で修繕費用が発生するのは「いろはのい」である。それなのに、管理会社のつくった長期修繕計画には、エレベーターの修繕について、まったく触れられていなかった。
「そうか! この管理会社は、エレベーター修繕について、ノウハウを持っていないのだ」と、このとき目が覚めるような思いがした。
エレベーターばかりではない、年表形式で以下に記述するが、大規模修繕を待っていたかのように、ばたばたと一気に痛みが出始めた。
大規模修繕が終わって、やれやれ、ほっと一息なんて、とんでもない話である。
以下の表の、太い青文字は、詳細な記録にリンクしているので、順次ご覧いただきたい。
築年数 | 西暦 | 主なトラブル | 対策の立案・実施 | 費用 |
13 | 1999 |
1.高齢の入居者が凍結路面で転倒・骨折事故 |
1.通路にロードヒーティング新設・階段に手摺設置 2.エレベーター機能回復工事と、保守契約の見直し 3.自動ドア更新工事 4.管理委託契約の見直し(別項目) |
1.399万円 2.735万円 3.105万円 |
14 | 2000 | 1.給油配管のトラブル | 1.給油設備・給油配管の更新 (修繕資金が底をつき、借り入れする) |
1.約900万円 |
15 | 2001 | 1.2月の厳寒により、通路の舗装が凍上 | 1.舗装の一部をグレードアップ(検討中) | 1.検討中 |
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【ホームページを作りながら考えたこと】
マンション修繕に関わるさまざまな問題について、本腰を入れて勉強し始めて、ごく当たり前のことに気付かされた。
日本人が、コンクリートの集合住宅に住み始めて、たかだか40年。
分譲マンションという形で、全国にこういう住居が普及をし始めて、約30年。
そのハードウエア(建物・設備)で、どんな悪さが起きているのか、それに対して、どのように診断を下し、どのように改修したらよいのかということについて、いわゆる専門書が登場し始めて、いったい何年が経過しているのだろう?
診断・改修の業界は、まだまだ情報が不足していて、決して技術的に成熟しているとはいえない。
私が、いま「参考書」として、活用している本の奥付をみると、もっとも古くて1995年の発行である。
月刊リフォームという改修の専門誌が初めて世に出たのは、1984年のことで、満17年が経過している。
診断・改修の専門家とは、少なくともそうした分野で10数年研鑽を積んだ人たちのことを言うのだろうと思うが、そういうひとが私の回りには数えるほどしかいない。新築を業とする建築士のうち、マンション改修にも造詣が深いと思われる人は、1%にも満たないように思う。
一方、建設業界は、バブル期の7割程度に受注が落ち込んでいるため、受注機会の獲得に向けて、リフォーム業界に注目が集まっている。
その結果、診断・改修分野では、技術的に「?」のつくような話を、よく耳にするようになった。
「マンション大規模修繕」は、安易にそうしたターゲットになっているように思う。
私が手にした「専門書」のなかには、体験に裏打ちされているとは思えない、単に「教科書」の焼き直しをしたような、何の役にも立たないものも散見される。
だからこそ、こうした「生の情報」の公開こそが、いちばん必要なことだと、信じて。
(エレベーター保守に関する章を書きながら 2001.6.3 Upload)
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