マンション改修の歴史5 (機械設備の修繕)

機械設備修繕 始末記(築13年目〜)

大規模修繕が終わったのも束の間 また難問が続出

【最初に私見】
 私は、マンションの管理について、まったく無知であった。

 多くのひとがそうであるように、新築マンションを選んだときは、間取りと設備と立地条件、そして懐具合を天秤にかけた。
 管理会社がどこだなんて、気にもしなかったし、組合運営にも関心がなかった。だから、流されるまま、みんなおまかせ。
 理事会でどんなことが話し合われ、どういう経過で、何が決まっていったのか、今となってはわからないことも多い。
 年に数回発行された、「管理組合だより」という公式な配布文書には、「結論」しか書いていないからだ。

 そんな私が、大規模修繕は自分の専門分野だからと手を挙げて、専門委員会を組織し、次々と発生する問題に取り組んで4年が経過した。
 2年掛かりで大規模修繕をやり遂げ、やれやれと安堵したのが、1998年秋のこと。

 しかし、それも束の間、エレベーター保守会社から、管理会社に宛てた「御見積書」が理事会に届けられた。
 エレベーター機械室にある、制御盤のボードやリレー類を更新すべきで、4基の合計で580万円かかるという見積もりだった。 
 やっとの思いで、大規模修繕を1000万円近く節減し、これを基金にして、次の配管設備更新を見据え、じっくり時間をかけて準備していこうと考えていた矢先に、580万円もの修繕の提案が出てきたのである。見落としていた私自身の「未熟」を思い知った。

 ところで、管理会社のつくった、「長期修繕計画」では、エレベーター修繕の費用について、どう予算化しているのか? と、あらためて見た。
 私のマンションでは、管理会社経由でメーカー保守会社と、「部分メンテナンス(POG)契約」をしていたから、経年で修繕費用が発生するのは「いろはのい」である。それなのに、管理会社のつくった長期修繕計画には、エレベーターの修繕について、まったく触れられていなかった。
 「そうか! この管理会社は、エレベーター修繕について、ノウハウを持っていないのだ」と、このとき目が覚めるような思いがした。

 エレベーターばかりではない、年表形式で以下に記述するが、大規模修繕を待っていたかのように、ばたばたと一気に痛みが出始めた。
 大規模修繕が終わって、やれやれ、ほっと一息なんて、とんでもない話である。
 以下の表の、太い青文字は、詳細な記録にリンクしているので、順次ご覧いただきたい。

築年数 西暦 主なトラブル 対策の立案・実施 費用
13 1999

1.高齢の入居者が凍結路面で転倒・骨折事故
2.エレベーターに不安全な兆候が出現
3.自動ドアのモーター不調
4.管理費の経常赤字が発覚

1.通路にロードヒーティング新設・階段に手摺設置
2.エレベーター機能回復工事と、保守契約の見直し
3.自動ドア更新工事
4.管理委託契約の見直し(別項目)
1.399万円
2.735万円
3.105万円
14 2000 1.給油配管のトラブル 1.給油設備・給油配管の更新
  (修繕資金が底をつき、借り入れする)
1.約900万円
15 2001 1.2月の厳寒により、通路の舗装が凍上 1.舗装の一部をグレードアップ(検討中) 1.検討中

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【ホームページを作りながら考えたこと】

 マンション修繕に関わるさまざまな問題について、本腰を入れて勉強し始めて、ごく当たり前のことに気付かされた。
 日本人が、コンクリートの集合住宅に住み始めて、たかだか40年。
 分譲マンションという形で、全国にこういう住居が普及をし始めて、約30年。
 そのハードウエア(建物・設備)で、どんな悪さが起きているのか、それに対して、どのように診断を下し、どのように改修したらよいのかということについて、いわゆる専門書が登場し始めて、いったい何年が経過しているのだろう?
 診断・改修の業界は、まだまだ情報が不足していて、決して技術的に成熟しているとはいえない。

 私が、いま「参考書」として、活用している本の奥付をみると、もっとも古くて1995年の発行である。
 月刊リフォームという改修の専門誌が初めて世に出たのは、1984年のことで、満17年が経過している。
 診断・改修の専門家とは、少なくともそうした分野で10数年研鑽を積んだ人たちのことを言うのだろうと思うが、そういうひとが私の回りには数えるほどしかいない。新築を業とする建築士のうち、マンション改修にも造詣が深いと思われる人は、1%にも満たないように思う。
 一方、建設業界は、バブル期の7割程度に受注が落ち込んでいるため、受注機会の獲得に向けて、リフォーム業界に注目が集まっている。
 その結果、診断・改修分野では、技術的に「?」のつくような話を、よく耳にするようになった。
 「マンション大規模修繕」は、安易にそうしたターゲットになっているように思う。

 私が手にした「専門書」のなかには、体験に裏打ちされているとは思えない、単に「教科書」の焼き直しをしたような、何の役にも立たないものも散見される。
 だからこそ、こうした「生の情報」の公開こそが、いちばん必要なことだと、信じて。

 (エレベーター保守に関する章を書きながら 2001.6.3 Upload)


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