建物診断書 1997


1997年6月から8月にかけて、2社から、建物診断書が提出された。
以下に、その体裁や、内容の一部(診断書の結論部分)を紹介する。


診断書の1ページ 診断書の全体写真
「北海道塗装」の調査報告書の一部
コンクリート躯体に穴を明けて、内視鏡で内部を確認
中性化の深さを調べているページ
「札幌マンション販売」の報告書の全体のイメージ
56戸のマンションで、この程度のものになる。
このほかに、調査報告図面が添付された。

「北海道塗装(仮名)」
外壁建物診断劣化調査報告書  平成9年5月

体裁 : B4×22ページ(うち写真17ページ55枚)

1. 建物外観全般

外壁旧塗膜の仕様はアクリルタイル吹付仕上げです。主に窓廻り四隅にひび割れが見受けられます。その部分からの雨水侵入により、表面に近い鉄筋から順次発錆し、錆によって鉄筋の体積が膨張し、周辺コンクリートを押出(表層部押出)鉄筋露出に至った箇所も見受けられます。
中性化試験の結果ひび割れ箇所からの雨水侵入が原因で若干ですがアルカリ性が進行しています。又、既存塗膜引っ張り試験では、平均値15.72 kgf/cm2とかなり高い数値がでていますので、健全な塗装塗膜であることが判明致しました。
以上の通り、旧塗膜劣化部は確実に撤去し、ひび割れ、鉄筋爆裂の補修を行い、外壁改修工事を早期に計画されることをお勧め致します。

2.防水関係(バルコニー床・屋上)

屋上立上り部に、若干膨れの箇所が見受けられます。又、経年劣化によるアスファルト保護トップコートの変退色が全般的に進行しています。一部塔屋排水管廻りの濡水により外壁を汚染させている箇所があります。
バルコニー床、平面部は以前樹脂モルタルでしごいていおり、コンクリートスラブ及び樹脂モルタルのひび割れが数多く発生しており、その部分からの剥離を助長させています。
以上のことにより、屋上立上り膨れ部の補修及び全面トップコート塗装、バルコニー床の改修工事をお勧めします。


「札幌マンション販売(仮名) お客様サービス室」
調査診断報告書         平成9年8月

体裁 : A4×80ページ(うち写真48ページ92枚) A1調査図面5枚


調査結果・当建物のひび割れが267もあり、特に窓廻りに多く、このまま放置しておきますと凍害等の影響を受け、ひび割れの幅が増大してきますので早めのうちに補修が必要であり、コンクリート内部の鉄筋にも悪影響を与える要因にもなります。

鉄筋の錆膨張によるコンクリート剥落・押し出し部が39ヶ所あり、コンクリート押し出し部は、このまま放置しておきますと錆膨張が進行し、コンクリートが剥落し、鉄筋が露出している箇所は、鉄筋の腐食がさらに進行し、コンクリート躯体に悪影響を与えますので早急に手当が必要です。

ひび割れに雨水等が侵入している箇所は、エフロレッセンスが流出しており、丸型セルフードより汚れが壁に付着し、外壁が汚れてきておりますので、ひび割れ等の手当をし、コンクリートの中性化抑制した上で再塗装をした方が最善かとおもわれます。

既存塗膜の付着力・躯体コンクリートの中性化試験を3ヶ所行いましたが、付着力は東面で17.5 kgf/cm2、西面で22.5 kgf/cm2、北面で12.5 kgf/cm2ありました。
躯体コンクリートの中性化は東面で8m/m、西面で10m/m、北面で8m/m程度進行しておりました。
躯体コンクリートの中性化は、内部鉄筋の錆腐食の進行の要因にもなりますので抑制が必要です。(建設省改修指針ではモルタル1m/m付着する事は1cmに匹敵する。)

鉄部材の錆による腐食は少ない方ですが、塗膜表面のチョーキングが著しく、塗り替えの時期にきていると思います。
一般的に鉄部材は3〜5年周期で塗り替えることが最良だと言われています。

窓廻り・打継目地等にシーリングが打ち込みされていますが、随所に付着不良・一部破損があり、弾力性・耐候性が低下してきており、防水機能も低下してきておりますので、全面打替の時期かと思います。
一般的にシーリングの耐久・耐候性は、5〜7年ぐらいといわれています。

バルコニー床はひび割れが発生しており、防水機能が低下して下の階の軒天井の漏水の原因にもなり、鉄筋の錆腐食の要因にもなりますので、防水性を高め保護することが必要です。

屋上防水は立上りに膨れ現象が多く見受けられ、また一部に雨水の浸入している箇所もあり、このまま放置しておきますと漏水の原因にもなりかねません。
一般的にアスファルト防水は、立上り部が7年、平場は10年程度の耐候性がいると言われております。当建物は竣工時より11年経過しておりますので、全面的再度防水を考えておくべきだと思います。

 共用内部階段室は全般的に壁の汚れが目立ち始め、窓下にはひび割れが発生しており、これらの処理後、塗り替えが必要と思われます。


 建物調査診断は、大規模修繕の基礎資料として絶対に必要なものである。
 私たちのマンションでは、たまたま2社から「サービス」という形で診断の提供を受けることができたが、建前で考えると、第三者機関が、施工業者とは別個に診断するのが良いという考えもある。
 しかし、このふたつの業者から、私が話を聞いた限りでは、「他の業者(たとえ、第三者機関であっても)が、診断した資料をもとにして、責任ある改修設計・施工はできない。」という考え方で、これも一理ある。
 どの方法が正しいということではないと思う。
 もし、私が業者の立場だったら、やはり自分自身で、診断していないと、施工することは不安だと思う。


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