マンション・ネットワーク でできること
 
1 互いの抱える問題点と解決策を共有する

【私見】
 日本各地にある管理組合の連合組織は、それぞれやむにやまれぬ思いで作られてきたのだろう。
 そうした組織はみな、現場感覚を持った人たちの熱い議論の中から生まれてきたのだろう。
 とにかく、私たちが求めていたものは、互いが知恵を出し合い、経験を共有する「場」であった。
 たくさんのひとを集めて、大きな組織にしていこうとは思っていない。
 大きな組織になったとたんに、生の声が聞こえなくなり、現場感覚が薄れてしまう。
 3つのマンションが集まって、クラスターをつくるという発想が私の原点にある。
 マンションが3つ集まれば、新しい知恵が生まれる。
 「馬鹿の一つ覚え」と言われようと、3人寄れば文殊の知恵だ。
 その基本を無視して、大きな組織を作ったら、求めるものが得られないと私は思う。
 ネットワークの原点は、自分がほんとうに困っていることを助けてもらった、その感謝の気持ちだろう。
 
 以下に、私たちのネットワークが産声を上げた、1999年4月・初会合の記録を紹介する。
 飾りのない自分の言葉で語れる喜びがとても新鮮だったことを、私は忘れられない。

1.保険に関して
2.共同生活のルール
3.保守契約について
4.理事会の運営について

【開会の辞】
<A>
 マンションに「三出せ」なる格言があると聞きます。
「カネを出せ」「知恵を出せ」「汗を出せ」であります。
 きょう、お集まりのみなさんは、それぞれに苦労されていると思いますが、ひとりの知恵では、たかが知れています。みなさんが、知恵を出し合い、そしてそれを情報公開する事によって、一人の知恵が、みんなの知恵となります。
 きょうは、そういった趣旨でお集まりいただきましたので、忌憚のないご意見をお願いいたします。
 では、一人ずつ簡単な自己紹介をお願いします。

【自己紹介・ひとことコメント】
<B> 
 理事長を3期・理事を4期ほど務めています。
 私は、管理会社に2年少し、勤めた経験がありますので、そこでのお話をします。
 マンションの管理会社は、会社の利益優先でフロントマンを配置しますから、じっさいにはなかなか個々のマンションの管理には目が届かないのです。一例を挙げると、当時、管理組合総会に、何度も行ったことがありますが、じっさいに会社がやっていることとは、まったく内容の違う、弁明書類ばかり作っていまして、そういう形だけ辻褄の合う資料でもって、総会を乗り切るのです。
 総会では、みんな素人ですし、監査の内容についても、核心をついてくるひとはいない。たまに、理事会に対して鋭い質問を発するひとがいても、「それじゃ、今年は、あんたが理事長をやってごらん。」という殺し文句で、だいたい反論は引っ込んでしまうのです。
 要するに、決算書は、計算上の正確さだけを求められていて、計算さえ合っていれば、内容の正確さなど誰も気にしていないのです。ただし、この嘘を見抜くのは簡単で、現金出納簿を要求して、これと決算書を突き合わせれば、必ずぼろが出ます。そんなことは、会社の経理を担当したことのある人なら、誰でもできることなのに、マンションの決算書に無関心だから放置されている。
 ともかく、管理会社は、会社の利益が上がればよいのであって、けっしてマンションの利益を優先するわけではない。だからこそ、管理組合が主体性をもって、管理会社に注文を付けなければいけないのです。
 預金通帳が、管理会社の代行になっていたら、まず取り戻すこと。
 それから、管理規約に精通すること。
 この二つが出発点であり、いろはの「い」でしょう。
 些末事にとらわれることはないのですが、理事会の役員は一人ではないのだから、手分けして、各人の専門分野を持ち、そのことだったら何でも俺に聞いてくれ、というくらいになると、だんぜん面白くなります。
 無駄なカネを極力減らすことです。修繕のように、資産の増加になるカネは使うべきですが、財産の減少になるようなものを、探し出して徹底的に切りつめる工夫が大切です。

<C>
 西区のマンションで、98年6月から新任理事長をやっております。
 たまたま大規模修繕の準備に入っており、インターネットで<E>さんのホームページを見つけ、こうして参加させていただきました。
 理事会の出席率が悪く、理事会が機能していないことが、悩みのタネで、みなさんのマンションでは、どのように運営しておられるのか、お聞きしたいと思って、きょうは参加しました。

<D>
 豊平区のマンションで、98年11月から、階数による輪番制で、理事長をやっております。
初めて理事長になって、どうしようかと悩み、図書館に行ったり、インターネットで調べたりしておりました。横浜・MCL(マンション管理研究会)の ホームページから、<E>さんの事を知り、メールのやりとりをしております。
 いろんな問題を抱えて、「なんとかしなきゃ」と考え理事会で提案し、マンションの保守的な傾向というか、事なかれ主義に抵抗しております。管理費の使途についても、バケツの底が抜けたようになっている気がして、電話と足を使って、委託契約先と交渉を続けています。
 表面的な金額の多寡を見ていては、本質を見失うことがあるように思います。事務手数料が5パーセント高くても、実質的なサービスが20パーセント増大すれば、結果として割安だと言うことになります。そうしたことが、少しずつわかってきました。

<A>
 自己紹介として、改めて申し上げるとすれば、共同戦線の威力であります。
 私はこのマンション(壱番館)の理事長をやっておりますが、管理組合設立当初から、双子の兄弟であるお隣(弐番館)の<F>さんと、管理組合の運営に関してはすべて共同作業で行っております。そうした成果が、お手元にある比較表です。これについては、別の機会にご説明します。

<E>
 私は、理事ではなく、大規模修繕のホームページを運営しています。
 昨年の7月から、ご近所である<A>さん、<F>さんと、親しくおつきあいをしております。また、<C>さん<D>さんとは電子メールだけのおつきあいでしたが、先週初めてお会いして、今日の会合をご案内したところ、趣旨に賛同して参加していただき感謝申し上げます。
 <A>さんがおっしゃった、知恵を集める・知恵を出し合うということについて、こんなことを考えました。
 これまでの、マンションの連合組織は、それなりの会費を徴収して運営しておりますね。
 なぜ会費が必要かと言いますと、まず事務所の地代家賃や専従者の給料が必要です。そして会報を発行するための印刷経費や、郵便代。講演会や研修会のための会場費など。考えてみると、組織を作り、組織を運営するためにはどうしてもそういう形態をとらねばならなかったのです。会費徴収は、私が思うに、必要悪でした。
 ところが、インターネット上で、ホームページを運営してみて分かったことは、情報の収集と蓄積、それに互いの知恵を出し合うということには、もはや組織は必要でなく、活動経費も、ボランティアの範囲でできてしまうのです。
 わかりやすい例が、みなさんのお手元にある今日の配付資料。ひとり5枚として、50円のコピー代がかかっています。これを、郵送するとしたら、ひとりについて80円プラス封筒代。10人という組織でさえ、もう1300円以上の直接経費が最低必要です。100人なら、13000円です。そのほかに人件費がかかります。どうしても、会費を徴収ということになりますね。
 ところが、これを電子メールで配信すると、100人に送っても、10円で済むのです。
 このことは、まさに組織作りにとって、革命と言ってよく、私は今回の集まりも、そういう「組織の形態をとらないネットワークづくり」の一環としてとらえています。情報の共有と、情報の公開が根底にあれば、ボランティアのコーディネーターが存在するだけで立派に運営できると信じます。ここには利権が発生しないし、当然権力闘争も存在しません。
 そういう考え方でこれから始めましょうというのではありません。すでに始まっているのです。新しい時代に向かって、新しい情報ネットワークのシステムづくりを、私は私なりに模索していきたいと考えています。

<F> 
 隣の弐番館の理事長を、やっております。
 2年間、<A>さんと共同戦線を張ってきました。まったくふたごの兄弟ですから、マンション管理の問題についてはすべて同じ問題が起こってきます。<A>さんから声をかけられたときは、渡りに船というより、船にただ乗り(一同爆笑)という感覚でした。こうして、2年間の成果も上がってきて、これからどういう方向に向かっていくかは未知ですが、ひとつだけわかったことがあります。
「マンション管理は、自分たちがアクションを起こさない限り、何も変わらない」ということです。だれも、私たちのために汗を流してはくれません。

<G>
 <J>理事長の下で、理事をやっています。ふだんは室蘭に赴任しております。
 週末だけ札幌に戻ってきており、きょうはこういう会合があると、<J>さんから聞いて、参加させていただきました

<H>
 <A>さんと、もと職場を同じくしていた関係で、今日のことを知り参加しました。
 私は、理事長でも役員でもありませんが、<A>さんから、おまえのマンションはいまに大変なことになるぞといわれ、いずれ、自分が役員になったときに、どのように運営していくか、勉強するつもりできています。

<J>
 こちらの壱番館・弐番館と同じ管理会社のKビルサービスと戦闘状態です。
 管理会社としての劣悪さで、Kビルサービスの右に出るものはないのではないかと思っています。
 一例を申しますと、管理組合の共用部の電気代を何ヶ月も滞納して、北電から延滞金を請求され、平然と管理費からその延滞金を払っておりました。その他、管理委託契約の不履行を追求し、67万円の損害賠償請求を行い、勝ち取ったところです。こうしたことから得た教訓をいくつか披露します。
1:理事会からの情報開示を徹底すること、広報の重要性です
2:理事会を定期的に開いて、その内容も公開すること。案内は電話で確認し、出席率100%をめざすこと
3:理事会は履行義務者であり、管理会社はマンション管理の履行補助者です。
  契約の履行については、厳しく求め、いささかの妥協があってもいけません。
4:問題が発生したときは、直ちに、最善を尽くすこと
5:会計処理を明確にして、修繕積立金を守ること
などであります。
 管理組合の運営に関してお話しすると、以前は管理会社にお任せというムードが強かったのですが、広報活動を盛んにして、情報開示を徹底しましたら、住民の連帯感が強くなってきました。新年会を契機に、ワインを飲みながらの懇談会を定期的に開催し、みなさんが忌憚のない意見を述べる機会を作っています。
 最近わかったことですが、緊急通報システムは、通報先との契約に関して、管理会社の不誠実な行為がが発覚し、現在追求しております。
 また、管理人の雇用については、雇用保険はおろか、健康保険や年金などにも加入させず、労働者の権利を踏みにじる行為が平然となされており、怒りを覚えます。
 まとめですが、理事会はボランティアに徹する意識が必要です。マンションという共生の一形態を、これから、どのようにしていくのか、みんなで知恵を出し合いましょう。


【1.保険に関して】

<B> マンションの保険について、いろいろな問題があると思うのですが。

<J> うちは、管理会社主導で、掛け捨て保険に加入していました。
 管理会社が、保険の代理店を兼ねているため、契約ごとに手数料が入るので、少しでも自分たちに利益になるような保険を押しつけてきます。マンションのために、知恵を絞ろうなどとは、これぽっちも考えていないようです。いろいろ調べて、「積み立て保険」に切り替えると、5年間で70万円も、資産を残せることが分かりました。掛け捨ては、損です。

<B> ある管理会社の主催する管理人向けの講習会に出たことがあります。
 そこでは、保険が適用になるかならないかの微妙なところは、できるだけ保険を使わないで済ませるように、「保険の適用は難しい」と答えるように教育していました。
 せっかく保険に入っていても、保険が適用されること知らないために、みすみす住民が高い金を払うという、そういう意味での「資産の流出」もあると思います。保険については、そうとうに勉強する必要を感じます。

<F> 管理会社は、そういう点ではプロとしての自覚が足りない。
 管理組合としては、管理会社に知恵を出してもらいたい思っているのに、じっさいのところ、管理組合と管理会社はいろんなところで、利害が相反するように感じます。
 うちでも、オートロックのパネルが破損した際、管理会社に問い合わせたら、保険は利かないという話だったので、直接保険会社に電話して掛け合ったら、保険金が支払われるという。 せっかく高い管理費を払っているのに、管理会社からまったく提案がないのは、どうしたことでしょう。我々が、管理会社を頼りすぎて、当事者能力を失っているのかも知れません。理事会は、当事者能力をいかに高めるかが、課題です。

<E> 私のマンションでは、過去に数回漏水事故が起きていますので、その経験談を。
 ウチの場合は、管理組合が成立して早い時期に、修繕積立金をベースにした、「積み立て保険」に切り替えましたから、掛け捨て保険のような、保険料支払いにともなう管理費の目減りの問題は、表面上ありません。当時から、漏水事故に対応するために、個人賠償責任保険も、全戸加入しています。
 ところが、保険金の支払いにあたって、管理会社の巧妙な手口を、昨年見つけてしまいました。
 昨年、5階の台所の給水栓のパッキンがゆるんで、大量の漏水が発生し、4階の居間の天井から、ぽたぽた漏れるという事故が起きました。すぐに保険の適用を申請したのですが、管理会社が待ってましたとばかり、石膏ボードとクロスを張り替えたのです。
 日常的に、そういう仕事をしている私の概算では6万円から、せいぜい8万円の仕事です。まあ、管理会社の経費を考えても、10万円といったところでした。
 補修が終わって、管理会社から、「保険できれいに直りました。個人賠償責任保険金で、内装屋に支払っておきましたので、入居者の方にはいっさい負担はありません。」との報告です。
 そこで私は、いったいいくらくらい掛かったのかと、確認したところ、なんと20万円以上という答えです。
 そんなにかかるはずはないのです。管理会社に任せておけば、工事をしてもらって、保険請求の手続きもしてもらって、誰も懐を痛めなくて済むのだけれど、これでは、漏水事故が起きるたびに、管理会社は、丸儲けです。
 我々は、そういうことまで、目を光らせていないといけないのかと、いささか悲しい話です。

【2.共同生活のルール】

<B> 自転車を廊下に置いていたり、ベランダに物置を置いたり、といったことについて。
 わたしのマンションでは、自転車をエレベーターに載せて、上の階の廊下に取り込むひとが出てきて、しまいに、エレベーターを傷つけたので、個人的に賠償してもらったら、さすがに2階・3階のひとはそういうことをしなくなった。ところが、こんどは、1階のひとは良いのかという話になる。共同生活のルールづくりは、平等・公平ということに尽きるのだけれど、なかなかそれがうまくいかない。
 共用部分に対する認識が、どうしても甘くなってしまうのが現実です。
 共同玄関に、平気でゴミを捨てていく若い人を見かけて注意すると、次の日にはこれ見よがしに、逆らってくる。
 あまり強く言うと、あの理事長は人間味がないとか、悪口を言われる始末です。「ピアノの騒音を注意してくれ」と言ったかと思うと、「ただし、私が苦情を言ったとは言わないでくれ」という始末。これでは、とても解決などできない。住民の意識か低すぎます。

<H> ひとつ質問なのですが、今年は雪が多かったせいか、雪庇(せっぴ)の問題が起きました。
 冬は、西風が強いので、屋上の東側に雪庇が張り出し、それが、2度ほど落ちて、隣のマンションの駐車場のクルマを直撃したのです。そこで、今年の予算で、管理会社の提案で、ルーフヒーターか何かの手段で、雪を溶かす設備費用を50万円計上したのですが、総会で議論になりました。
 雪庇ができて、それが隣のマンションのクルマや、通行人に危害を与えるというのは、欠陥マンションではないかというのです。

<F> それが建物の欠陥だというのは難しいでしょう。ウチでは雪庇落としは管理人の業務です。 うちでも、14階で雪庇を落としたら、風で隣の2階建ての屋根を直撃してしまい、謝りに行きましたよ。

<J> さっきの騒音問題だけど、一般論では全く効果がないですね。
 こういうことに注意しましょうなんて、何回広報しても、「我関せず」ですね。はっきりと、お宅の下の階から苦情がきていますよ、と言わなければ効果はありませんね。理事長は、ある意味で悪者になる覚悟がいりますよ。

<D> 被害者の立場になってみてはじめて、問題に気がつくと言うことがありますね。
 下の階から騒音の苦情がきても、「集合住宅なのだから、ある程度はやむを得ないと割り切って暮らしましょう。私はそういう覚悟で暮らしていますよ」なんて、しれっと言っていたひとが、いざ自分の上の階にひとが暮らし始めたら、こんどは「我慢できない」と言い出す始末。つまり、騒音問題というのは、被害者にとってのみ、問題なのであって、自分が加害者であるという意識はなかなか持てないようです。

<F> うちでも、プロの歌手が住んでいまして、騒音問題になりました。
 経緯は省略しますが、下の階から苦情が出まして、お話に行ったところ、歌うことを職業にしている方でしたのでね、これは日常の騒音とは違う、我慢できる話ではないとはっきり申し上げたら、すぐに防音工事をして、ぴたっと収まりました。

<一同> へえ、そんなに簡単に工事ができるものですか

<E> 防音工事にも、いろいろな方法がありますが、現実的なのはユニット工法です。
 内装を防音仕様のものにやり換えるのではなく、現在の部屋の内部に、きちんと防音された一回り小さな小屋を組み立てるイメージです。
 代表的なのは、たとえばYAMAHAの既製品です。ピアノの練習をする方などには最適な方法ですので、そういう問題を抱えている方には、お奨めします。

<F> いずれにせよ、我々のマンションのグレードというものを意識すべきでしょう。
 ふつうに暮らしていても、多少は騒音が発生するわけで、我慢すべきものは、お互いさまで、我慢しなくちゃいけない。でも、限度を超えるものについては、きちんと注意しなくちゃいけない、その使い分け・判断も理事会の仕事でしょうね。

<D> こちらの2棟の管理組合のお話は、うらやましい限りです。
 私のマンションは1番館が約50戸・2番館が約100戸で、1年ほど販売時期がずれています。管理組合は、棟別です。
 平面配置の関係から、1番館の住民は、外出の際に2番館の駐車場を通り抜けた方が、近道になるのですが、これが2番館の住民にとっては面白くない。そして、販売の時に、売り主が駐車場の割り当てについて無責任なことを言ったために、2番館の敷地に1番館の住人が、駐車していて、既得権と称して、がんとして譲らないために、1番館と2番館の理事会は、ことごとく対立する状態です。
 原始規約を見直して、自分たちのルールを明確にした上で、今までのごね得状態を、一つずつ排除していきたいと思っています。

<J> いちど、わがままを通してしまうと、収拾がつかなくなりますね。
矛盾のあるものは、みんなでルールを明文化して、いったんこうと決めたら、毅然として断行することです。ひとりでも、なあなあを許したら、もうだめです。

【3.保守契約について】

<D> エレベーターの保守契約について、2,3面白い話があります。
 まず、管理会社についてですが、会計処理が明朗で、たとえば保守契約時のキックバックがないと明言している管理会社に、管理費支出の合い見積もりを取ってみると、年間で93万円も減らせることがわかりました。これは、半日勤務の管理人を一日勤務に変更して、よりきめの細かい管理をしてもらう前提での話です。
 私のマンションには、9停止2台と10停止1台があり、計3台でこれまで年間約250万円の保守費用(フルメンテ)を、管理会社経由で、メーカーに支払ってきましたが、エレベータの保守契約料も、その時点で年間12万6千円減らせるとのことでした、。
 その後、エレベータのメーカーを直接訪問し、私が、メーカー以外の独立系保守会社とも交渉してきたことや、一般に管理会社に保守料をピンハネされていることなどを話し、責任者と交渉した結果、私たちのエレベータ保守料は、さらに削減できる見通しがついてきました。(後日談として、年間40万円の保守料減額ができることになったとの報告あり。じつに15%以上もの節約である。)

<E> 最終的には、独立系ではなく、メーカーとの契約ですか?

<D> 独立系との見積金額の差が、無視できるほど小さくなったと感じたからです。
 メーカーには、メーカーの論理があって、最終的に、40年から50年くらい、エレベーターを動かそうとしているときに、メーカーには、エレベータそのものを作るノウハウを持っているという安心感を強調しています。つまり、独立系の会社は、20年から30年くらいのスパンで、いわゆる保守点検だけではエレベータの寿命を延ばせないと見切った時点で、本体の入れ替えを提案してくる可能性が高いと、メーカーでは言っています。でも、25年後の、高齢者の多いマンションで、1カ月もかけてエレベータを入れ替えるなんて、実際にできっこないと思います。

<A> 私どものマンションの、第1期からの、各種契約金額の推移をプリントしました。
 さきほど<D>さんがおっしゃったように、我々が管理会社を当てにせず、足で稼いで交渉をしていくと、各種契約金額は見る見る下がっていきます。ひとつのマンションだけでも、これだけの成果を上げられるのですから、たくさんのマンションが連携することによって、どれだけ力を発揮するか、わかりません。ぜひ参考にしてください。

【4.理事会の運営について】

<C>
 理事会の運営について、みなさんのお話を聞きたい。
 私どもは、毎月定例の理事会を決めているのですが、出席率が悪くて、理事会として成立しないことが多いので、困っています。みなさんは、どのようにしていらっしゃるのか。理事の決め方は?

<F> 今2期目ですが、理事の選出は難しい。1期目は、抽選でした。
 現段階では、リーダーシップを発揮するしかないと考えますが、いずれ、理事長を交代してもらえるようにしたい。そのためには、新しい理事長さんをサポートできる力を付けたいと思っています。

<A> 私も、2期続けて理事長を経験しておもうことがあります。
まず、理事長はやや強引と思われるくらいのリーダーシップが必要です。と同時に、常に自制して、自分をコントロールする事も必要です。相反した話に聞こえますが、どちらが欠けても、理事会運営はうまくいかない。

<B> 私のマンションは理事長と、他の理事の役割分担を決めています。
 理事長は、管理組合の総体に関わる案件を処理します。理事は、主として入居者の生活意識、たとえばペット問題や騒音対策など。具体的にはルールを明確にして、理事が全員一致して妥協を許さないこと。逃げ腰になったら終わりです。
 ペット問題では、飼う自由そのものは排除できないということと、実際に発生する鳴き声やにおいといった苦情とを、どんなふうにマンション全体で調和させるかと言うこと尽きると考えます。
 ペット同好会を組織させて、動物を飼いたい人たち自らがルールを決めて、ルールを破ったら、ペットを飼っている他の人たちが迷惑を被るので、お互いにルールを守るよう監視するといった形もとっています。
 それと、理事会を補佐する組織として、修繕委員会があります。ただ、これはあくまでも理事会の補助的組織ですから、なにか問題が生じたら、あくまで理事会が責任を問われます。

<E> 修繕委員会には、専門家も参加していますか?

<B> 知識を持ったひとも、知識のない普通の人も入っています。
 委員の構成は難しいですが、専門家の役割は、専門的な知識を素人にわかりやすく説明することだと思います。そういう説明があれば、あとは素人でも、いろいろな判断はできます。

<E> おっしゃるとおりです。専門家の知識は、ある意味では偏っています。
 最終的な判断は、理事会なり、総会なりで、全員が知恵を絞って、常識で判断すれば良いと思います。専門委員会があると、そこがあたかも決定機関のように思う人が出てきます。そうではないというルール作りも、理事会のリーダシップ一つでしょうね。

【総括と次回の予定】

<A>
 時間も詰まってきました。そろそろ今日の総括をしたい。

<F> きょうの日を楽しみにしていました。
 去年、偶然理事長に推されて、<A>さんと切り盛りをしてきました。1年目は何がなんだか分からないうちに終わってしまったけれど、2年目をやってみて、おもしろさを感じるようになりました。きょうは、いろんなひとの意見を聞いて、たいへん参考になりました。ぜひこの会合を、定期的にしていただきたい。自分一人の知識では、何もできなかったと思っています。こういう機会を通じて、みなさんの意見を聞きたいと思います。

<H> みなさんの取り組み方に圧倒されました。
私も、これから、マンション問題には積極的に参加したいと思います。

<J> 日本は法治国家なのに、マンション管理会社の不法行為は目に余る。
 友人を通して、マンション問題に詳しい弁護士と親しくなれたので、そういう専門家の知識も借りて、みんなで知恵を絞って、マンションを住み良くしたい。マンション管理会社のノウハウが少ないのは目に見えている。我々が自分の財産を自分で守ろうという意識を持たないと、彼らのいいようにされてしまう。

<A> それでは、次回は、季節ごと3カ月おきということにしましょう。
 7月に入りましたら、またお知らせをいたします。
 記録文書ができあがりましたら、お送りします。
 (23:15 終了)

【編集後記】
◆あっという間の4時間。白熱した意見交換のおそらく何割かしか文章にして残すことができなかった。私自身が、話に聞き入ってしまい、手が止まってしまったこともある。また、右に左に展開する話題の流れに、手が追いつかなかったことも事実。◆今回は、具体的なノウハウの開示が目的なのではなく、マンションを巡る各人さまざまな奮戦ぶりが披露され、互いに耳を傾ける時間が持てた。「みんな、そんなふうに頑張ってるんだ」という感想が、正直なところだろう。◆一人では持ちこたえられない。でもみんなで支え合えば、どんな難問でも、解決の糸口が見つかるはず。そんな感慨を得た方も多かったのでは? 発言の趣旨に、間違いがありましたら、お知らせください。修正いたします。
  (1999/5/20脱稿  文責:寺地

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